一回目の推敲作業に目途がついたら、二回目は別の視点で確認をしていきます。物語の構成について全体像が見えていますので、文章と文章の関係を精査し、スムーズな流れに整理します。
ここでは、ストーリーがうまくつながっているかの確認が中心です。一つひとつ文章の意味を正しく読み取ることが大切で、ある程度の読解力が問われます。実際に経験した例を挙げながら解説しますので、これらの推敲法について少しずつ学びを深め、実践していきましょう。
【参考記事】 物語の構成を固める見直し方~一回目の推敲で着目する点~
二回目は文章の流れ、意味、文章間の関係性に目を向ける
一回目の推敲では、マクロの範囲で物語全体の構造について注意を払ってきました。二回目は少しだけ焦点を絞って、各章の内部を読み返してしっくりこない部分を修正します。
具体的には以下のようなことに気をつけるべきです。
●前後の文章の意味が自然なつながりになっているか
●登場人物の行動や心理に違和感はないか
●時系列があやふやになっていないか
●同じ人物や出来事についての説明不能な変化がないか
●言葉の使い方に誤りがないか
●読者が文章の意味を容易に理解できるか
1.矛盾を修正する【参考事例】
👉例1:栗山丈『音楽珍事絵図』

この作品は、ある大学で当時講義を担当していた際に起こった立てこもり事件の騒動を乗り越えた講師に、振り返りのインタビューを元音楽教員が行った記録を小説にしたものです。講師の当時の心境を振り返って、現在の気持ちが語られています。
緑マーカー部分を読んでいただければわかりますが、講師の事件以後の人生は大きく変わり、人を避けるようになったり自律神経の乱れからうつ病に至ったとあります。
そこで、
黄色マーカー部分の編集者のコメントをご覧ください。
「以降の出来事を読むと、普通の人と接触できなくなったり、うつ病になるような終わり方ではないと思うのですが…」
という違和感を持たれています。
次の原稿データは結びの部分ですが、私の錯誤によりハッピーエンドで記述してしまっていました。


原稿上の次の文などが、今ではそうコメントする原因になったものと思っています。
その他にも、ポジティブな姿勢で生きている表現がいくつかありましたので、疑問が生じて今回の投げかけがあったものです。
この作品は、プロットをたまたま作成していませんでした。体調管理が思わしくなく精神不安定の時期であったため、ストーリー制作に乱れがありました。病苦を乗り越えたあとの本人の描写をしたつもりでしたが、読み手はそう捉えず、その後はハッピーエンドに見えていたのです。
指摘後は全体を読み返して決定的な過誤に気づき、以後気をつけるべき課題だと認識を新たにした記憶があります。
最後は4ページの緑マーカー部分の記述を削除して、矛盾を解消することにしました。
これは一部の物語の筋に食い違いが生じた例で、このように一部につじつまが合わないことに気づいたときには、ただちに矛盾点を改善する必要があります。
矛盾点がそのまま気づかずに残っていると、作品としての完成度は損なわれ、その後の推敲の細かな部分にも無駄な作業が発生するなどの影響が出ることがあります。
2.大きな修正後の確認は必須
修正したあとには、修正した文章とそれに関係する文章との関係性について、整合性が保たれているかどうかを再確認しましょう。
修正し終えて、それで安心してしまうのはまだ早いです。関係を確認してもまだ違和感が残ることがあります。この種の修正は納得がいくまで何度も読み直し、修正を施すことが望ましいです。

書いているうちに前の書きあげた文章は、どうしても記憶が薄れていきます。原稿を後戻りさせて軽く見返して思い出すようにするだけでも、筋書きのズレを食い止めることができます。
3.複雑な修正はあせらず慎重に
意味の奥深い文章で読者にすぐに理解しにくいものや複数の文章にまたがる複雑な修正などは、慎重に時間をかけて矛盾や難解な部分を解消していきましょう。
👉例2:栗山丈『紙のための音楽』
下の3ページにまたがる原稿薄いグレーの網掛け部分は、現代の音楽などにみられる「文字の楽譜」で、五線紙を使用しない指揮者の指示と演奏者の事前打合せをしておくことで演奏が可能な楽譜です。


読んでみると、演奏者たちへの多様な指示が書かれていて、少し専門的かもしれません。1つ目のページに、コメントで「いま一つイメージがわかないと感じつつ、ただ逆にそれが深く感じますので再確認を」という編集者からのメッセージがありました。
このあとどうしたのかは、紆余曲折の末に、結局は楽譜の表現については据え置いたという過程がありました。
確かにこの作品を読む読者には、音楽に詳しい方には何でもないかもしれませんが、一般には理解しにくいものです。わかりやすく書き直すことも考えましたが、「音楽小説」という品位を保ちつつ、音楽の魅力を自分なりに表現するにあたり、言葉で書いた楽譜が実際どんな音になるのかを伝えたかったからでもあります。
実際に直すべき課題があるものの、検討の結果、元の表現を維持した事例になります。

推敲は必ずしも修正することだけが推敲ではないと考えます。作品の表現を掘り下げてよく検討し、出した結論を大切に活かすようにしましょう。
あらすじの矛盾をできるだけなくす
ストーリーに矛盾(流れにズレが生じる)が出る場合は、次の要領で作業しているときに起こることが多いです。
●プロットに準じずに構想を進めているケース
●書き出しから結末までのストーリーの流れがしっかりと定まっていないケース
●全体のあらすじがつかみきれていないケース
このような状態のものを気づかずにそのままになっていると、物語が進展していくにつれて元の軸に戻すのも容易でなくなりますので、傷口が小さいうちに処置をしておくことが重要です。
1.執筆の段階での意識しておくべきこと
上記の3点のケースには作品の構成や内容が十分に練り上げられていないことが原因としてあります。これらを更に引き起こす原因がメンタル面でも生じることがありますので、気をつけておきましょう。
●日頃から、なるべくモチベーションを維持することを心がけ、気持ちを引き締めて執筆する
●体調の良くないときに、無理に執筆を進めてしまう
●長期的に長編などを執筆する場合は、現在の書き進めている箇所より以前のストーリーを逐次読み返す習慣を取り入れる

体調の思わしくないときに机に向かい、無理にアイデアをひねり出しそのまま書き続けたときのことです。その後、主人公が非現実的な行動に徐々に進展してしまい、あとになって現実に修正をすることが難しいほど手を付けられなくなりました。その『夜の音楽』という作品は結局ボツにした苦い記憶があります。
2.推敲時にすべきこと
同様に上記のことを遵守しつつ、実際に推敲する場では次のことを試してみてください。ちょっとした意識で、文章の矛盾を減らすことができます。
●文章内容をしっかりと読み取る意識を持ち、違和感のある箇所をすべてなくすことを心がける
●特に自信のない原稿は、第三者(家族、友人など)に読んでもらって、おかしな箇所を指摘してもらうとよい
まとめ
二回目の推敲は一回目のチェックが完全に終わってから行いましょう。推敲の二回目では作品の骨格を固めてから、各章や文章間の関係におかしなところがないかを確認します。
ポイントは各章内、段落単位、あるいは作品の内容に辻褄が合わないような箇所、表現がうまく嚙み合わない箇所がないかどうかをチェックします。併せて、言葉の使い方に引っかかりを感じた箇所を見つけたら直してください。
全体につじつまが合わないことを見過ごさないよう気をつけましょう。その後の修正になればなるほどその改善は複雑となり、最後まで残ってしまうと、その作品の決定的な汚点となってしまいます。
今回の推敲は内容に問題がなくなるまで、何度も読み返して確認を進めましょう。今回の問題がそのまま残されていると、その次の段階の推敲に入ってからの推敲と別の修正視点と入り混じり、その後の修正がますます難しくなりますので、完全に修正し切ってください。
また、文章によっては、深読みをしないと理解できなくなる文章も少なくないかと思います。その場合はあわてずに時間をかけて着実に修正を施すことが大切です。
執筆した文章の意味が通らなくなってしまうのは、そのときのモチベーションの低下や体調の良くないときに起きやすくなるものです。くれぐれも調子が乗らないときは執筆は避けるべきです。
プロットをもとに物語の創作をしないときにも、方向性を見失うことも出てくるかと思いますので、全体を遡った確認は惜しまないでください。推敲の場ではおかしな箇所を徹底的に洗い出しをする必要があります。必要な箇所をすべて改める意識を持って取り組みましょう。

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