結末まで本文が書けたら、次のステップは「推敲」です。推敲とは一度書き終えた作品の本文を、言葉の使用の誤りや表現の見直しについて自身の考え方に基づいて文章の修正を行うことです。繰り返し何度も読み返し、誤字脱字をはじめ、より適切な表現へ改め、文章の表現・描写の質を豊かにするために行います。
今回は推敲作業に入る前に、知っておきたいポイントがありますのでご紹介します。推敲はどのように行うのか、どんなことに注意してに行うのかなど、効果的に進める方法を解説します。
推敲する前に理解しておきたい5点
今まで、苦労を重ねてやっと書き上げた原稿。結末まで自信を持って書き終えても、その文章が完璧に仕上がっていることはありません。しっかりと書いてきたつもりであっも、“てにをは” の置き方に間違いがあると辻褄も合わなくなっていたり、ニュアンスが違っていたりすると思います。
一例ですが、次のようなことを確認し修正を行います。
1.作品の表現を豊かにする過程
本文を見直していく段階で、辞典を使用して気付いたり、相応しい表現の思いつきによって、より豊かな表現に出会うことがあります。文章を磨き上げ、洗練させるプロセスなのです。

推敲で本文を読み返しているときに、「こんなこと書いたっけ?」という思うほどに、がっかりする文章を書いていて幻滅することがあります。そんな文章をここで発見できたことはラッキーと思うべきでしょう。そんなときは「言い換え辞典」などで検索してよりフィットした文章にブラッシュアップをしましょう。
推敲しているときに、フィットした表現に出会ったときの満足感は何ごとにも代え難いものです。私は深い表現にたどり着いた時は、感慨に浸りその喜びを充分に噛みしめます。一つひとつの発見の嬉しさは、心の状態の高揚につながるものと思っています。
その喜びは執筆や日常生活全体にいい影響を与えるような気がしてなりません。
2.時間を置いて行う
一般に、書き上げて間もない文章をすぐに推敲するべきではないと言われています。私の経験では、書いた時点の感情や感覚が鮮明な状態であれば、推敲作業も同じ感覚で行われてしまいますので別の視点で見直すことはできません。
同じ感覚ですぐに推敲に入ると、書いた文章の誤りに気付きにくくなるという状況が起こります。このようなことを避けるためには、時間を置いて書いた当時の感覚が抜けた新たな感覚で推敲するのがよいのです。
少なくとも一日程度の時間を置くと、以前の感覚とは違った視点を持つことができます。感情が変われば視点も変わりますので、文面の意外な箇所にまで眼が行き届くようになります。
書いた直後に推敲を始めていたことがありますが、書き終えた疲労感と書き上げた達成感が入り混じり、不思議と適切な表現が思い浮かぶようにはならず、誤りにも気付きにくい効率の悪い状態でした。
試しにその翌日も、たまたま過去に途中まで書き上げた別の未発表の作品を書き上げて、推敲を始めたのです。すると、同じように書いたし側の目線から抜けられることはなく、第三者の視点からは落ち着いてチェックすることができませんでした。
この経験で、書き上げた直後の凝り固まった視点が抜けきらないうちは、推敲の成果は得られにくいことが身に沁みてわかったのです。

「小説の書き方」などから学ぶ「推敲は時間を置いてからかかれ」という教えは、なぜそうなのかを自分で考え、追及することが重要です。自ら試し、体験して心と身体から学べばその本質がよく理解できるはずです。
3.短期間で終わらせない
推敲は短い時間で終わらす類いのものではありません。早く済ませてしまうと、それだけ作品の粗さが目立つことにもなります。何度も何度も本文を読み直し、文法的な誤り、納得のいかない表現を修正していきましょう。
自分が一度正しいと思って書いた内容に修正することは、それなりの注意力・判断力を伴うため、時間をかけて慎重に臨まなければならないことは認識しておきましょう。
ただ、時間の制約もありますので、締め切りのない仕上げには納得のいくまで作業を進め、そうでないものは許す限りの時間で何度も行うべきかと思っています。
👉理想的な推敲作業例:

あわてて済ませてあとで出版の段階で、決定的な間違いが見つかることこそ悔しいことはありません。じっくりと集中して取りかかりましょう。
4.声に出して推敲する
作家で実践してる人はそれほど多くないかもしれませんが、文章を声に出して読み上げながら推敲することで、多くの気付きが得られます。
頭で考えるだけで修正していくよりも、身体の一部を使うことによって脳が刺激され思考は活性化することが、声を出して推敲するうちに分かってきました。特に誤字脱字などは発見しやすいですし、言葉の豊かさを感受することが多くため、私は実践しています。

適切でない言葉を発した段階で修正すべきことに気づきやすくなり、より適する言葉がインターネット上の類語辞典などで見つけられます。声に発する力は、よい表現へと導くエネルギーを宿しているのではないでしょうか。
5.特定の時間に行う習慣
個人差があると思いますが、推敲は習慣的に気分の安定している時間帯に行い、毎日同様の時間に継続することをお勧めします。一日の感情には波があると思いますので、やる気の出ない時間帯に行っても、思考力が鈍り効率が悪いだけです。
いつも執筆する時間を決めている場合は、その習慣でそのまま行えば問題はないでしょう。いつも執筆する時間がバラバラであるとなかなか集中しづらく、質のよい推敲はできないものです。一日の執筆計画をきちんと組み直し、限られた一日の時間を効率的に使いましょう。
私の執筆時間は朝の出勤前の90分間と夕方の家に帰る前の60分と比較的定着しています。その時間に合わせて推敲もします。朝型のタイプということもあり、特に夜の時間帯は集中力に欠けることが多いため一切行いません。
推敲作業の視点
読みやすさや説得力を高めるために、文章を客観的な立場から見直す切り口で推敲に臨みましょう。その視点は一点だけではありません。「構成」や「論理展開」、「表現」などの目的に応じて視点を切り替え、見直し作業を繰り返します。
推敲のポイントには大局的に次のような作業が伴いますので、まず推敲に取り掛かる視点について一定の理解を深めましょう。
1.全体から見た視点で考える
●導入部または結論の明確さ: 読者に対してどのようなことを伝えたいのかが、はっきりとしたメッセージが示されている(最初でも結論でも示される場所は自由)
●論理の破綻: テーマが最後まで一貫としていて、タイトル、章の見出しなどに整合性があり、全体にわたって論理的な進展されている
●情報の過不足: 記述するべき情報量が多くもなく少なくもない適量である

ストーリーの流れに逆らうようなズレが生じていると、誰が読んでも違和感が生じてきます。作品はおろか作家自身に対し不信感を抱かれてしまいますので、これは絶対に気を付けなければならない点です。
2.部分的・個々に焦点を当てた視点で考える(一文章・段落単位)
●冗長な表現の是正: 同じ語句や意味合いの重複が施された言葉、無駄な修飾語は削除する
●表記のゆれの確認: 同義語(「私」「わたし」、「出来る」「できる」、数字の全角・半角など)、その他の専門用語の使い方を統一する
私はよく音楽上の専門用語を使うことがあります。「ボーカル」と「ヴォーカル」、「ベートーベン」と「ベートーヴェン」、「ファゴット」と「バスーン」、「合奏」と「アンサンブル」など、同義語を無意識に混在させてしまうほうですが、推敲の段階でどちらかに必ず統一をして修正しています。
3.読者から見た視点に立つ
推敲と校正の違いは……
推敲は執筆した作者自らが文章上の誤りを修正し、読みやすさなどの観点から作品の質を高めるための作業です。そして校正は出版の段階で、出版社の編集者が第三者の視点として加わり、誤字脱字・表記ゆれなどのチェックを行うものです。
*校正は作者の思想の根本を改めるような編集者の助言や抜本的な修正などが入ることがあります。
「推敲と校正は何が違うのか」は、外見は自身で行うか、編集者が介入するかの違いですが、、校正のほうが見直しの掘り下げ方が深くなります。後者のほうがより広い視点で作品を豊かなものに仕上げることができます。
それぞれの作業のしかたは混同させずにこれから実践を通して整理しておきましょう。
まとめ
「推敲とは何か」を知らずにいきなり始めるのではなく、推敲作業で修正すべき項目、視点を理解したうえで始めると、完成度が一段と高まります。
推敲の目的は作品の不備を修正し、豊かに質のよい内容に仕上げていくものです。作業も慌てずに一定の時間を置いてから、ある程度の時間をかけて何回も行うこととされています。より精密に行う方法としては、声に出したり、自分の効率のよい時間帯に合せて行うこともポイントになります。
また、作品全体から部分的な視点まで、見方を自在に変えて見直すことが大切で、一方的な視点だけが先行してしまう作品は、押しつけがましくなりやすいので注意を要します。
自分だけの視野で推敲していると、どうしても気づきにくいところが出てきます。できたら身近な人に読んでもらって違和感などがないかを感想をもらうとよいでしょう。読者の視点に立った読みやすさ、理解のしやすい作品に仕上げる心構えで推敲作業に取り掛かりましょう。

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