文章はある程度、有機的に構成されているもので、小説も決して例外ではありません。平坦な内容がいつまでも続くような流れではなく、その中で強調するべき箇所は強調する必要があります。また、文章上の性格で論文のように堅めの内容のものもありますが、小説は概して読みやすくすっきりした文章のほうが好まれます。
この記事では、多様なテクニックで表現を補助する手段を使って、読者と取り込む方法をご紹介します。小説本文をメリハリをつけて、すっきりとした文章にしていくことを目的に話を進めます。
効果的な表現の強め方6選
“はなし言葉”でも、聞かせどころを強調するように、文章でも強調するべき箇所が出ます。これがたとえ話や冗談、ユーモアを入れたりすることも強調の一種と考えてよいでしょう。
次のように文字の上(縦書きの場合は右側)に「読点」を打つことも強調です。
「来るまで車で待つか」(半蔵『B&M』より)
あるいは、明朝体の文章中で強調したい単語や文章をゴシック体を使って目立たせる方法もよく採られます。しかし、多用のしすぎは要注意です。目立つ箇所が多すぎてはかえって印象が薄れてしまうからです。強調のしかたによって、より文章が生きもしますし、死んでしまうこともあるのです。
私も平坦な文章をダラダラと書くことには物足りなさを感じてしまうほうで、文章の途中に簡単な“詩”を挿入したり、有名な格言を入れるようなことがよくあります。著名な文学作品などを常日頃参考にして、自分のアイデアを実現化しています。

強調の表現は文章を深く味わえるような、ちょっとしたアクセントとして使用するのが効果的です。
読者の意識を惹きつけるための、よく使用される主な表現の強調法を次にご紹介します。
1.位置を工夫した強調
文章中に強調する言葉をどこに配置するかは、書き手にとっては大切な仕事になります。文章の途中に置くのでは印象が薄れるのは言うまでもありません。これまで、先に結論を述べたものはよくありますが、読者にとってはこれがいちばんわかりやすいと思います。また、後ろのほうで強調した場合でも表現を強めることができます。
●文章の初めに強調したいこと(結論)を出すのは、新聞記事などはよくこの方法を使っています。これはこの文章に対し読み手側の関心を惹く効果がありますし、すべて読まないうちに要点が把握でき、その先をさらに読みたい気持ちにさせることができます。
👉例:「彼は人を攻撃することに悦び見出していた」
読者には「なぜだろうか」という気持ちが湧き、ページを先に進めたくなります。
●強調する考えを文章の最後に置くことは結論づけたり、しめくくるときに使用します。読者に長く記憶に残してもらったり、深く考えてもらいたい結論にしたい場合は効果的です。
2.スタイルによる強調
次のような方法によって表現を強調できます。
●具体的な表現を用います。わかりやすい比喩で例えることが多いです。
👉例:「彼女はおしゃべりである」➡「彼女は弾丸を発するごとくよくしゃべる」
●状況の説明よりも、行動・感情で活き活きと表現すると、その場の状況が鮮明になります。
👉例:「彼は緊張して何が何だかわからなくなった」 ➡ 「彼は頭が真っ白になり、足が震えて声がでなかった」
●リズム感を持たせた文章は、読んだ印象が一層強まるひとつの方法です。実際に読んでみてその良さを感じてみましょう。よい響きと流暢なすべりだしで読み進める感触を味わってください。
👉例:「春の風、花の香りに、誘われて」(七五調)、「見て、触れて、心ゆくまで楽しむ」(三段リズム)、「昨日の涙を、明日の笑顔に」(対句)、「彼は走った。息せき切って走った。ゴール目指して走った」(文末の統一)
●好奇心を起こさせる書き方は、おもしろいエピソードをはじめに例示したり、読者の考えを求めたりする方法が考えられます。地文に工夫をこらして文章の単調な表現に変化をつけます。
👉例:「以前にこんな状況に遭遇した。私が本屋で選書していると~」(エピソード)、「あなたはこの事態をどう思うだろうか?」(疑問の投げかけ)
この考え方を採用することはとても重要だと考えていて、小説の文体を時間をかけて確立するための要素であると私は考えています。
3.言葉の少なさによる強調
文章を連ねることは、表現したいことを書きたいだけ加えればいいというものではありません。分量が多くて、不必要な語句で飾られていると、強調したいことが薄れてしまいます。次のような広告の例は極端かもしれませんが、言葉が少なくなるにつれてインパクトがでてきます。
👉例:「当社のエアコンの性能が抜群です」➡「当社のエアコンが抜群です」➡「エアコンが抜群です」➡「エアコンが抜群」➡「エアコン」

特に身内や友人との会話の場合には、あまり丁寧にしゃべることはしませんので、私は簡潔にするように心がけています。次のように読者に伝わる最低限で、しかも日常性を醸し出すことが大切になると考えます。
「今日どうする?」
「どうしもしない」
「あっ、そ。わかった」
4.たたみかけによる強調
文章、あるいはひとつの段落内で、終わりに向かってたたみかけて、考え方や表現を強める方法です。
👉例:うちの妹は勝気です。のべつ幕なしで人とおしゃべりしています。友人との会話では話がいつもエスカレートしてしまうのです。女性同士では大抵話が盛り上がりますが、実はそうでないときもあるようです。要するに、相性の良くない人とはかえって衝突を起こし兼ねません。しゃべりすぎると相手は逆に煙たがり、その苛立ちはますます募ります。最後には相手の怒りが最高潮に達し、愛想つかされてしまうのです。
5.繰り返しの効果による強調
●言葉の繰り返しは、確かに読者にとって印象に残るものです。音楽でも“オスティナート”と言って、同じパターンの音型が繰り返されると自然と頭に残りやすくなります。はっきり限定された語句を繰り返すのが効果的です。
👉例:有吉佐和子『ハッピーバースデー』
桝内亨三は美男である。おまけに頭がよくて、最高学府と云われるT大学の、しかも(…後略…) 。桝内亨三は美男である。家庭は父親を早くなくしたが、彼一人に溶けるように甘い母親の手で、慈愛不足なく成長した。(…後略…)。桝内亨三は、若くて、美男で、才気煥発で、おまけに運がよくって(…後略…)。
●変化をつけた表現で、その考え方を繰り返す方法もあります。次の例は「現金払い」を強調しています。
👉例:老人が叫ぶ。「私はキャッシュレスは嫌いだ。カード払いだの現金チャージ方法が第一よくわからない。世の中の流れについていけないから、現金払いしかしない」
わたしはSNSで投稿したり交流するときには、そのときに話題になったキーワードなどを繰り返し使うことで、相手方の受け止め方を印象づくる方法を使うときが割とあります。とたえば会話を交わすときに、「~です。ホンマもんです」、「今日は~を買いました。ホンマもんです」というように語尾に同じ文句を入れると、相手の印象が強まります。
6.補助的に使用する強調
その他に、文章を強調するために、“絶対”、“大変”、“最大”のような強調する語句を使うことがあります。ただし、控えめに使用してこそ効果がでるものです。また、「!」、「?」を要所で使うことがありますが、これも使用しすぎには注意が必要です。
文章をすっきりさせる秘訣6選
次に示すようなことを注意して書くだけで、文章はシンプルに読み手に理解されやすいものになります。ちょっとした見直しをする際、また一度書いた文章を見返したときには意識してみるといいと思います。基本的なことかもしれませんが、再度整理してみます。
1.いらない言葉をけずる
一文、または一つの段落を書いてから読み返す際に省いても意味をなす言葉が含まれていて、削ったほうがいいと思ったら省きましょう。もしも、省いて物足りなさを感じたら、文脈に合う言葉を添え直します。
👉例:「違和感を感じる」 ➡ 「違和感がある」(意味の重複)、「というわけではないが」 ➡ 「ではなく」(言い換え)、「私は今の現状について、まず最初に検討を行うことが必要であるというふうに訴えた」➡「現状について、まず検討が必要だと訴えた」(主語・無用な語句の省略、言葉の重複、動詞を名詞に)
👉省いて物足りなさを感じた例:
元の文: 「軽井沢に滞在中は、絵を描いていました」 ➡ 削った結果: 「軽井沢で絵を描いていた」 ➡ 滞在の時間感覚がなく物足りなさを修正: 「軽井沢に滞在している間、ずっと絵を描いていた」
以前、出版した際の話です。結構みっちりと重みのある『パガニーニ・デザイン』という作品を書いたのですが、前文があまりに重々しいという指摘を受け、そっくり出版者から新しい文章の提案がありました。確かに隙間もなく、重苦しいイメージを他人から言われて気がついたのです。
結局、自身で提案の文章を少し校正し、本文の前の序章として差し替えました。その結果、軽くてすっきりとした内容に様変わりして、読みやすくなったと言われました。そんな自分では気づきにくい苦い経験もしています。
2.素直さを出し、あっさりとした表現にする
修飾されすぎた文章は今の時代にはあまり好まれません。素直であっさりとした文章は、今の時代は飾り立てない、真情が表れたものが読まれやすくなっています。
👉例:「ふと空を見上げると、この社会で何が正しいのか分からなくなった。お腹は減るし、眠くなる。それが一番の真実なんだと思う」

登場人物の素直に感情がこもった表現は、読者の気持ちをつかむことができます。状況説明よりも人の感情であっさりと状況を描写をすれば、読み手の心をとらえることにもつながります。
3.長い表現を圧縮する
しまりのないダラダラした文章は、圧縮するべきでしょう。修正するときは初めのうちは、いくつかの文を一つの文にまとめ、次にひとつの文中をセンテンスにし、最後にセンテンスをまた単語にする手順がよいかと思います。慣れているならば、これに従うことはありません。
「昨日の午後は、セメントを塗ったような灰色の空の下、私は身の置き所がなかったので、脇道の喫茶店に入った。出てきたコーヒーは熱いだけで、香りも乏しい。私はただ、窓外を行き交う人々を眺めていた。夕食の献立から人生の目的まで、まとまりのない思考が頭を巡る。サルの軽い足取りのように気持ちは落ち着かず、時間だけが過ぎていった。」
4.重複をなくす
ひとつの文中に同じような意味の語句はどちらかを省きましょう。それは意外と自分では気が付きにくい箇所に潜んでいます。
読み直しの際に意識しておけば、たやすく防ぐことはできます。私は語句の意味を冷静に確認することで重複は発見し解消をしています。
👉例:いちばん最初 ➡ 最初、 被害を被る ➡ 被害を受けるor損害を被る、 可能性があるかもしれない ➡ 可能性がある、 約5分ほど ➡ 5分ほど、 挙式を挙げる ➡ 式を挙げる
5.“主語”をけずる
初めの文章やその場にいる人の「主語」が明確であれば、それ以降は主語を省くほうがすっきりします。主語がはっきりしている場合、省略できるのは日本語の大きな特質と言えます。
👉例:「佐藤さんは会議に遅れて来ました。佐藤さんは理由を説明せずにすぐに席に着きました」➡ 「佐藤さんは会議に遅れて来ました。理由を説明せずにすぐに席に着きました」(主語が明確なケース)
「あなたはそこに座ってください 」➡ 「座ってください」(自分とあと一人の二人しかいないケース)
6.流れを自然にする
読んでみてところどころに引っかかりがあると感じたら、流れのよいように修正します。文章では説明文などに思想的に難しい箇所などがありますが、ここでは表現上で流れが止まってしまうものが該当します。読点(、)がない場合は息継ぎができなくて流れが乱れることもありますので、適切な箇所に打ちましょう。

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