わかりやすい一点集中推敲法①~一回目の推敲で着目する点~

推敲する

一度に様々な点に気をつけながら推敲するとなると、いろいろなことに気を配りながら進めなくてはなりませんから、作業としては複雑になります。人間の能力は幅広いところに目を届かせるには限界があるため、狙いを絞って修正項目を分散させた推敲をするほうが整理しやすく効率的です。

そこで、私が実践している心を集中させて実践できる推敲法をご紹介します。複雑な思考はする必要はなく、シンプルでわかりやすく進めることができます。この「一回目の推敲」の記事に続けて「二回目」、「三回目」……とこのあとにご紹介していく予定です。

時間効率が悪く能率が上がらない総合的な推敲

初めから、完璧に文章を仕上げようと細かく複雑に考えながら進めると、色々な問題点が浮かび上がり、かなり混乱してしまうのではないでしょうか。私は神経を張り巡らせて、初めから細かく推敲することには向いていませんでした。

いずれにしても複数回の推敲をするわけですから、最終的には一回ごとに修正するべき点を絞ることで混沌とした作業が避けられ、頭の中がクリアな状態で進めることにします。一概に言えることではないですが、的を絞った推敲はテンポよくできて、煩雑さを軽減できます。

半蔵
半蔵

私はこの方法の採用前、採用後で格段に効率性に差が出たことを実感できました。人間の集中力の限界を見定めた無理のない手法だと思います。

以下の説明では、引き続き作業内容がわかるように、修正履歴を残して表示しています。

一度目は文章の流れに気をつけて

初めに物語の展開に不自然がないか、文章構成に違和感がないかどうかをチェックする作業をしていきましょう。

1.全体の統一するための確認

物語の大枠をとらえた構成、流れを確認する作業になります。一度目の推敲は文章一つひとつの意味を考えるような深読みをする必要はありません。

一度目の誤字・脱字、表記の揺れ、てにをは、表現の修正はまだ気にせずに文章の構成・流れに集中してチェックをする
👉例1:全体を通して統一したもの:(各章タイトルのルール統一)
この原稿は私の長編『四条河原町ヘテロフォニー1~純情編~』の本文の冒頭部分です。
原稿は全7章からなる音楽青春小説で、各章には音楽の演奏形式や舞曲の名称のタイトルが付され、その解説が次の行で書かれています。
第1章 プレリュード(前奏曲)
*礼拝、あるいは組曲やフーガのような曲のまえに演奏されるようにつくられた器楽曲
第2章 バラード(小叙事詩)
*中世のできごとやロマン的な物語を扱い、音楽がつけられたもの
・・・・・・
初めはそれぞれの解説を付けたままだったのですが、その後に文末に上付き数字を付加し、それぞれ文章の出典先を巻末に記したものです。文章を引用する場合は、出典先を表記するのが鉄則です。出典先は1か所とはかぎりませんので、解説の文末に「(1)」として、巻末に「(1)●●音楽辞典」のように(7)まで記すようにしました。
👉例2:いくつもの同様の表現をひとつに統一したもの
この例は、コンサートを聴きに来る人たちの表現を混在して使用していたことが発覚したので、ひとつの表現に統一した例です。文言の修正に属すると考えることもできるかもしれませんが、この物語全体に関わる言葉ですので、「全体の統一」の場で推敲することにしました。
「聴き手」と「聴衆」と「観客」の混在 ➡︎ 「観客」に統一
👉例3:原稿上にある紙面の書類に囲みをつけたもの
この物語にはコンサートのパンフレットや、主人公の書いたメモ・記録などがたびたび登場します。初稿では、紙面をイメージするものは書類の部分を実線で囲むことをしていましたが、一部のものを囲むべきか囲まないべきかを悩んでいました。
結局、新しい団体を結成する際の役割分担についてもわかりやすくするために、紙面化したことにして実線で囲むことにしたものです。
その際にはメモでコメントを挿入し、「~の範囲を実線で囲んでください。」と残すこともできますが、例のように朱書きで視覚化することもあります。

2.章や段落を組み直したり、入れ替える作業

その他にその章を前後の章とを入れ替えたり、ひとつの段落をほかの場所に移動させたりすることその章をまるまる書き直すことがあります。
物語の一部の章をまるまる書き直した例として以前の記事に掲載したものですが、私の短編『パガニーニ・デザイン』を再掲します。一度、編集者がそっくり書き直した章を著者側が再修正したものです。
半蔵
半蔵

特に自分で段落・章単位でしっくりこなかったり、気に入らない部分があるときは、この段階で思い切って新しく書き直すことをお勧めします。後々、読んだときにモヤモヤが残るような後悔はしないようにしてください。

物語の構成として、結論の事象を一番はじめに置いて、そのあとにそこまでに至る経過をメインにストーリーに展開させるタイプを倒叙型とうじょがたと言います。
👉「倒叙型」の作品例:
●ドストエフスキー『罪と罰』
序盤で犯行が明たかにされる「倒叙型(とうじょがた)」の典型例の作品。犯人ラスコーリニコフの心理的葛藤と真相を暴こうとする者の駆け引きを描いた草分け的な存在です。
●松本清張『点と線』
自殺案件と思われていた「心中」が、警察の執着心から暴かれることによって、計画的な殺人という事実に覆る、思いもよらないストーリーが展開されます。

「倒叙型」には通常の展開とは異なる緊張感や快感度がアップし、トリックや犯行の手口に輝きをみせることができるなど、盛り上がりの演出ができる特徴があります。また、事件を追う刑事や探偵の有能性を目立たせる効果が得られます。

まとめ

推敲は様々な項目にかけて矛盾や誤字、表記の揺れを是正するものです。したがって、修正項目を絞って行う方法が混乱せずに整理できます。複雑な思考をせずに、段階的にシンプルでわかりやすく進めるられることが利点となっています。

初めから細かくすべての修正すべき点に神経を集中させて修正を入れるのは、複雑な思考に陥り混乱も生じます。かえって能率を下げてしまい、質の良い推敲結果は得られなくなるでしょう。

このあとも、繰り返して推敲をしていくことになりますので、一回一回で修正ポイントを絞りましょう。

一回目は、物語の構成章と章の関係性一貫した文言の統一性などについてざっくりと見ていきます。読んでいるうちに文章の流れに矛盾を感じたり、内容にそぐわない段落や章は思い切って書き直します。また、一部の段落を前後に置き換えたり、章と章の前後を入れ替えて、先に物語の構成を固めてしまいましょう。

上記のようにマクロな修正を先にするほうが全体の構成が安定しますので、より細部の推敲がしやすくなります。全体の構成をまず固める作業をしてください。

この段階では深読みをして細かなチェックをする場ではありません。全体を俯瞰する意識で取り組んでみてください。

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