物語の構成を固める見直し方~一回目の推敲で着目する点~

推敲する

多くの点に配慮しなければならない推敲は、いろいろなことに気を配りながら進める必要があります。人間の能力は幅広く目を届かせるには限界があり、ねらいを絞って修正対象を分散させた推敲が有効です。

今回は私の考えている集中のしやすい推敲法をお伝えしたいと思います。複雑な思考はする必要はなく、簡素に進められる手法です。「一回目に行う推敲」のあとに、続けて「二回目」、「三回目」……とご紹介していく予定です。

はかどりにくく、時間的効率が悪い総合的な推敲

最初から、文章を仕上げようと細かく複雑に見ていくと、色々な問題点が浮かび上がり、かなり混乱してしまうのではないでしょうか。私は神経を張り巡らせて、初めから細かく推敲することにはためらいがありました。

そこで、考えたのが一回一回の推敲で修正項目を絞った「一点集中推敲」方式です。

いずれにせよ複数回の推敲が必要ですから、最終的には一回ごとに修正するべき点を絞ることで混沌とした作業が回避でき、クリアな状態で取り組めます。一概に言えることではないですが、修正するべき対象を絞った推敲は進捗度がよく、煩雑さを軽減できます。

半蔵
半蔵

私はこの方法の採用前、採用後で格段に効率性に差が出たことを実感できました。割とスピーディに作業が運ぶため、時間の節約にもなります。

以下の説明では、引き続き作業内容がわかるように、修正履歴を残して表示しています。

一回目は文章の構成・流れに注目する

初回は物語の構造・展開に問題がないか、そして各章の構成に違和感がないかをチェックします。

1.全体を統一するための確認

物語の大枠をとらえ、不整合や齟齬のない構成であることを点検します。一回目の推敲は文章一つひとつを形づくるような深読みはしません。

一度目は誤字脱字、表記の揺れ、てにをは、などの修正は次回以降に回し、文章の構成・流れに集中してチェックをする
👉例1:全体を通して一定の規則化をしたもの:(各章のタイトルの解説)
これは私の長編『四条河原町ヘテロフォニー1~純情編~』の本文の冒頭部分です。
原稿は全7章からなる音楽青春小説で、各章には音楽の演奏形式や舞曲の名称のタイトルが付され、それに対する解説が次に書かれています。
第1章 プレリュード(前奏曲)
*礼拝、あるいは組曲やフーガのような曲のまえに演奏されるようにつくられた器楽曲
第2章 バラード(小叙事詩)
*中世のできごとやロマン的な物語を扱い、音楽がつけられたもの
・・・・・・
初めはそれぞれに解説を付しただけでしたが、そのうしろの文末に上付き数字を付し、各文章の出典先を巻末に追記したものです。文章を引用する場合は、出典先を表記するのが鉄則ですので、解説の末尾に「(1)」として、巻末に「(1)●●音楽辞典」のように(7)まで記すようにしました。
半蔵
半蔵

このように専門用語や本文に詳細の説明を加えたい場合は、本文に補足するよりも章末あるいは巻末に説明を加えることをお勧めします。

👉例2:いくつもの同様の表現をひとつに一本化したもの
この例は、コンサートを聴きに来る人たちの表現を混在して使用していたことが発覚したので、ひとつの表現に統一した例です。全般に存在する言葉ですので、「全体の統一」の場で推敲することにしています。
「聴き手」と「聴衆」と「観客」の混在 ➡︎ 「観客」に統一
👉例3:原稿上にある紙面の書類に囲みをつけたもの
初稿では、紙面をイメージするものは書類の部分を実線で囲むことをしていましたが、一部のものを囲むべきか囲まないべきかを悩んでいました。
結局、新しい団体を結成する際の役割分担についてもわかりやすくするために、紙面化したことにして実線で囲むことにしました。
メモ機能で、「~の範囲を実線で囲んでください。」とするよりも、例のように視覚ではっきりとわかるようにしました。

2.章・段落の組み直し作業

ある章を前後の章と入れ替えたり、ひとつの段落をほかの場所に移動させること、また一つの章を書きあらためることがあります。
この例は私の短編『パガニーニ・デザイン』を再掲します。これは編集者が修正案として書き直したものを更に私が再修正したものです。
半蔵
半蔵

特に自分で段落・章単位でしっくりこなかったり、気に入らない部分があるときは、この段階で思い切って新しく書き直すことも必要です。後々、読んだときにモヤモヤが残るような後悔はしないようにしましょう。

 

 

ここで、物語の展開のしかたとして、結末に起こったことを冒頭にもってきて、そこにたどり着くまでの出来事を中心に描く手法を参考にご紹介します。
物語の構成として、事件や大切な結論を冒頭に置いて、そのあとにその結末までに至る経過を主軸にストーリーを進行させるタイプを「倒叙型とうじょがた」と言う。
👉「倒叙型」の作品例:
●ドストエフスキー『罪と罰』
序盤で犯行が明らかにされる「倒叙型(とうじょがた)」の典型例の作品。犯人ラスコーリニコフの心理的葛藤と真相が暴かれる駆け引きを描いた草分け的な存在です。
●三枝成彰 オペラ『忠臣蔵』
こちらは、小説作品ではありませんが、明確な「倒叙型」の構造をとり、わかりやすいので挙げました。冒頭が「討ち入り」が終わった後の切腹の直前の赤穂浪士の心理が語られます。以後、様々な回想がよぎり、松の廊下で浅野内匠頭の刀傷までが描かれ、なぜ討ち入りに至るようになったのかが、観客に明瞭に伝わります。

「倒叙型」には通常の展開とは異なる緊張感や快感度がアップし、トリックや犯行の手口に輝きをみせることができるなどの特徴があります。また、結論までの展開や人間の心理が明確に浮かび上がったり、事件を追う場合に刑事や探偵の有能性を目立たせる効果が得られます。

この方法を用いるには、事前の筋書きをよく練り、その過程での人間の行動・心理にともなう苦しみ、喜びどの内面性を引き出して描かれることが多いです。

まとめ

推敲は様々な項目にかけて矛盾や誤字、表記の揺れを是正する機会です。したがって、修正項目を絞って行う方法が混乱せずに整理でき、複雑な思考を省け、段階的にシンプルに進められます。

推敲は複数回に分け、各回の修正ポイントを絞りましょう。

一回目は、物語の構成の問題の解決や章と章などの結びつき、一貫した言葉の整合性などについて大局的に見ていきます。読んでいるうちに章と章の流れに矛盾を感じたり、内容にそぐわない段落や章は思い切って書き直します。また、一部の段落を前後に置き換えたり、章を入れ替えるなどして、先に物語の骨組みを決めてしまうことが必要です。

上記のように、マクロな修正を先にして全体の構造をフィックスさせたほうが、あとの細部の推敲がしやすくなります。作品の構造が固められないうちは、この段階での推敲を完了させずに何度も遡って確認を行い、完全に終了させましょう。

今回は、言葉の意味合い、引っかかりなどの細かなチェックをする場ではありませんので、全体を俯瞰する意識で取り組んでみてください。

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