小説のネタを情報収集する実践法を紹介〜身近なところから現地取材まで〜

小説を書き始める前に

小説の物語を構成は、自分の思いつきのアイデアだけでと成り立たつものではありません。場面設定の段階、登場人物の行動、また言葉の表現に詰まったときなど、いろいろな資料を参考にして組み立てていきます。ネタを肉付けして物語を書く前に、情報をどのように収集していくといいのかをここでは説明します。

 

情報収集は適宜、身近なところから始める

ここでは身近な情報収集も含めて、以後、「取材」という言葉で統一して説明していきます。「取材」と言っても、適宜行う “言葉の意味” や “他の言い換え表現” を辞書などで調べる軽易なもの、小説のテーマやコンセプトに関わるしっかりと押さえておかなければならないもの、ストーリーや主人公の設定に必要な細かなこと、物語の世界観を構築するための調査など、多岐にわたってきます。

まず初めに物語の本筋としてコンセプト、ストーリー、主人公、世界観といった骨格になる部分について調べなくてはいけないことを抽出する作業から始めます。そして、目的を明確にしてください。調査すべき事項が整理できたら、収集する内容に応じて、取材のしかたを選択していきます。ひとつの見解だけでなく、なるべく複数の考えかた、反対の意見なども調べるようにしましょう。身近なところでできる取材から順に始めていくようにします。

自分の知るノウハウから

初めに調べたい項目について、持ち合わせているノウハウで、自分の知る範囲でいいので情報をまとめてみてください。書こうとしている小説のネタが自分の範疇でわかる知識や関心ごとに沿うものでしたら、創作ノートに抽出してみるだけでも、素材の基礎的な情報として使えることでしょう。

そのうえで、詳細をさらに調べなくてはいけないことは出てきますので、不足していることは次に挙げる方法で調べて解決できるようにしておきます。

自宅にある書籍資料から

過去に学習してきたことや関心のあることで、自宅に関係する本や資料がある場合は活用してみてください。専門書、辞典などの文献による資料はその道の研究者が著述していますので、一定の正確性を有しており、信頼度が高くいい情報源と言えます。

日常生活から

テレビ番組の視聴していても、歴史、科学、動・植物に関する番組、また地域を紹介している旅の情報、特定地域のグルメ、クイズ、バラエティ番組のテレビ出演者のコメントなど情報が参考になることが十分にあります。ふとしたタイミングで有益な情報が得られるものです。

そのほかに、仕事先で予想もしていない情報を得たり、外出していてユニークな光景に出会うこともあります。人から聞いた話や雑誌に掲載されていたことなどからネタにしてみたいと思うこともあるでしょう。普段の生活から様々な情報との接点が見い出されます。

作家はいつも目の前に起こる出来事や現象には関心を持って、観察することが求められてきますので、意識しておいてください。

近辺の情報から

私生活や自然現象、社会環境などを見回すと、いろいろと面白い現象や不思議に思うようなことに気づきます。そこからネタとして取り上げてみるのもひとつの方法です。次に示すのはあくまでも一例ですが、こうした疑問を取り上げるには、きちんと調べて、状況・事情・理由・解答などは理解をしておくことになります。

●カフェオレとカフェラテは何が違うのか

●台風はなぜ日本列島に接近しやすいのか

●近所の雑貨店に得体の知れない不思議なものを販売している

●電車の座席はなぜ端から埋まっていくのか

●総理大臣を選出するのに、国会議員による間接選挙で選ばれる(国政に民意が反映しにくい)

インターネットから取材をする

目的がある程度定まっていて、世代を問わず幅広い情報を得たい場合は、インターネットから情報を収集するのが便利です。インターネット検索ができる環境があれば、時間をかけずにすぐに調べられるのが利点ですので、今後、小説を書いていくうえで利用頻度は高まってくるでしょう。

言葉の意味を調べたり、ちょっとした未知な案件を検索したりする簡易な調べものには有益です。GoogleやYahooの検索エンジンからかなり広く、そして浅く調べることができます。

比較的ボリュームのある取材としては、場面設定の段階で、どこかの土地を舞台にして多岐にわたる場合です。自分の住んでいる土地を舞台にするのであれば、日頃の生活観から様々な環境設定が容易にできますが、知らない土地を舞台に設定した場合、風土上の特性、郷土性、地名、街の様子などを把握しておくための資料を探します。

ある程度拾い上げたら、時間をかけて資料を閲覧します。土地勘が得られるように、身体に沁みこませるようなイメージで、潜在意識のなかでその土地を思い描けると、素晴らしい物語になります。

図書館の郷土資料を活用する

最寄りの図書館、遠方の図書館の利用方法

最寄りの図書館を上手に利用することは、身近の効果的なよい取材源となります。特定の土地に関することを書く場合に、地域の情報を深く調べるために、その地域の図書館に行くと『郷土に関係する資料』を必ず所蔵しています。

『郷土資料』は、その土地に固有な歴史、時代の変遷による町の様子を知ることができますし、名所・名跡に関するさらに詳しい観光情報、その土地にしか知られていない昔話、逸話など、ほかでは見ることできない珍品資料を目にすることができます。その地域のことを調べるには、上記の資を料のほか、その自治体が発行する市史、郷土の歴史家が詳しい史実を記した著作などに目を通してみると、知られていない意外な発見ができるものです。

各図書館のホームページにアクセスしますと、「蔵書検索」が必ずできるようになっています。そこから、あらかじめ調査したい内容が掲載されていそうな地域資料の目星をつけておくとよいでしょう。

また、現地の図書館司書に相談すると、「レファレンス」と言って、調べたいテーマや要望にかなった資料を提示してくれます。相談の方法はわざわざ来館しなくても、その図書館のホームページからメールや質問コーナーから調べたい事項を送ると、後日、回答をしてくれて、閲覧したい資料を揃えておいてくれます。

実際に資料を閲覧する場合は来館するのが、手間や時間がかからずに済むためおすすめです。現地に行かずに図書館関係の資料で取材をする場合には、お住まいの自治体の図書館を通じて、現地の図書館から閲覧したい資料を自ら郵送費を負担することによって、現物を送ってもらうこともできます。

閲覧については、資料の性格(一般の資料、資料の貴重度)によっては、お住まいの図書館の館内限定で閲覧が制限されることがありますのでご注意ください。必ずしも自宅に持ち帰ることができるとは限りませんのであらかじめ図書館に確認をしておくのがいいでしょう。

公立の図書館ではなく、大学図書館の場合も取り扱いは同様ですが、現地の大学図書館には一般の方は入館することができないのが原則となっています。どうしても現地の大学図書館に行かなければならない場合は、お住まいの公立図書館に相談をし、来館日時などを指定のうえ、「紹介状」を発行してもらってから行くとスムーズです。

原則、図書館の所蔵する資料は調査研究の目的に限り、館内で著作権法の範囲で一人一部のみ、最大で資料の半分まで(一部除外される資料あり)コピーすることが認められています。入手しておきたい資料が見つかったら必要であればコピーしておいて、いつでも見返せるようにしておくのが便利です。

国立国会図書館の利用方法

東京の千代田区永田町1丁目にある国立国会図書館は、一般の利用も可能です。利用者登録のうえ、利用することができます。ただし、現物を自分で本棚から取り出すことはできません。すべて係員が出納して、館内で閲覧をするようになります。必要な部分は依頼すれば公立図書館と同様に係員がコピーをしてくれます(コピー単価は公立図書館より若干高めです)。

また、地方の図書館と同様、お住まいの自治体の図書館に資料およびコピーの送付もしています。片道の郵送料の負担が必要となりますが、その際はまずお住まいの自治体の図書館にご相談ください。

国立国会図書館―National Diet Library
国立国会図書館の公式ウェブサイトです。当館は、国内外の資料・情報を広く収集・保存して、知識・文化の基盤となり、国会の活動を補佐するとともに、行政・司法及び国民に図書館サービスを提供しています。

 

半蔵
半蔵

以前に図書館で仕事をしていた経験上、図書館の利用は今も頻繁にしています。自分の住まいの図書館にも、旅行関係資料をはじめとして、ほぼすべてのカテゴリーにおける図書資料のほか、雑誌・新聞なども揃っていますので、頼りになる取材の場と言えます。

 

現地や地方に行かないと収集できない取材

特定の土地を舞台にした物語を書く場合には、その地域の情報を収集しないとリアリティのある小説は書くことができません。必ずしも交通費をかけた現地取材を絶対にしなければならないことはありませんが、その土地・環境を訪れることで深みの増した舞台を描けるのは間違いありません。

自分の知識や身近な取材だけで書ける小説ももちろんあります。しかし、事前に書きたい内容が決まっていて、書くための情報がインターネットの取材だけでは不足していると感じるのであれば、ぜひ取材を行ってください。

取材を行うことによって、小説の文章がよりリアリティに書くことができますし、わからないことが明確にできて、創作のはかどりもよくなることでしょう。取材をするのであれば、せっかく時間を取ってすることですから、知っておかなければいけない事項は事前に整理しておき、自分のニーズに応じた取材をするようにしましょう。

 

現地に足を運ぶ

小説に組み込みたいと思っている土地を訪れて、舞台にしたい場所を幅広く視察する場合が該当します。交通費やガソリン代をかけて行くことになりますので、時間に無駄なく、また取材し忘れるような案件がないように、スケジュールを立てましょう。

また、郷土性を十分に引き出すべく、その土地の観光できる場所を観たり、美味しい名物を堪能したりして、五感で現地を感じるほうが、一層洗練された文章が書けることにつながります。

専門家や事情の詳しい人に話を聞く

現地へ行かなくとも、知りたい情報について、事前に専門家やその事情に詳しい方にアポイントメントを取って、インタビューをする方法もあります。

また、現地に訪れた際に地元の方にあらかじめ聞きたいと思ったことを尋ねてみたりしてもいいでしょう。

気をつけなければいけないのは、インタビューをお願いする人にせよ、地元の方にせよ、先方に過多な負担や迷惑をかけないことです。人としてのマナーを守り、常識の範囲で取材は実施しましょう。

土地の役場・市役所の観光課など

地元の役場・市役所には観光を担当する部署が存在します。そこで発行している観光マップ、地域のまちおこしに関する資料、地域にまつわる昔話など、その他の資料を無料で配布していることがありますので、入手しておくとあとあと参考になります。

また、担当職員に調べたい事項を尋ねると、自治体ならでは情報を教えてくれることもありますし、地域の歴史に詳しい地元の研究家を紹介してくれることもあります。そういう方に土地にまつわる話を聞くことができれば、さらに深い情報が得られる取材になります。

文献調査

その土地に訪れたら、その地域の図書館に行って地域資料を閲覧する方法です。初めて訪れることになりますから、図書館の司書に地域資料の場所と知りたいこと、調べたい事項を伝え、その結果、紹介された資料を閲覧するようにしましょう。

 

半蔵
半蔵

京都の魅力を訪ねて取材に出かけたときは、物語の各ポイントに使用するべき風土を徹底的にインターネットから調べ上げ、研究を重ねました。さらに現地に実際行き、名所、行事、美味しい食の取材などをして物語に反映させ、ストーリーを一層引き立たせることができました。現地取材をすることによる作品の充実度は各段に増します。

 

小説のネタを情報収集する方法 “まとめ”

数々の情報収集の方法をご紹介してきましたが、ひと目でわかるようにまとめてみました。

身近な場所から

●自分のノウハウを十分に活用する ……  知っている範囲でネタに関すること

●自宅にある書籍資料から探す   ……  専門書、辞典などの文献から得られること

●日常生活から取り上げる     ……  生活のなかで遭遇したこと

●近辺の情報を利用する      ……  身近な場所で面白い現象や不思議に思うようなこと

●インターネットで調査する    ……  関心・疑問に思ったこと

図書館の郷土資料の活用

●最寄りのまたは遠方の図書館の利用 ……  目的に応じた内容の資料閲覧

●国立国会図書館の利用       ……  全国の幅広い資料の調査・閲覧

現地や地方に直接出向いた取材

●現地に足を運んだ視察    ……   イメージを湧かせたいときに有効

●事情に詳しい人の話を聞く  …… より細かな未知の情報の収集が可能

●自治体の観光部署の取材   …… 地域の固有の情報を入手

●その地域の図書館の文献調査 …… 研究者による信頼性の高い資料の発掘

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